資本取引・損益取引区分の原則
今回は、資本取引・損益取引区分の原則についてです。
企業会計原則の3番目に書かれている原則。
会計を始めたばかりの人には、理解するのが難しいかもしれませんが、会計の目的に関係した大事な原則です。
【資本取引・損益取引区分の原則】は、法規集にこのように書かれています。
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資本取引・損益取引区分の原則:資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。
おい、まんまやんけ。
そう、名前通り、資本取引と損益取引を区分しなさいという原則です。
ちなみに、後半の「資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」という部分については株式会社の説明をするときに書く予定ですので、今回はとりあえず、資本取引と損益取引ってなんなのか?なんのための原則なのか?について説明したいと思います。
結論からというと、元手からいくら儲かったかをはっきりさせとくために元手のお金の記録(資本取引)と商売で動いたお金の記録(損益取引)を分けましょうという原則です。
説明のために、ルカに登場してきてもらいましょう。
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ルカの果物屋は、順調にいっていた。毎日、現金残高・売上高などをキチンと記録しているため、日々、儲かっていか否かを把握できていた。
ルカは仕事終わりに帳簿を書いていた。
「今日の売上は100リラで仕入が60リラだから、利益は40リラか。よし、現金の残高が500リラだから、このうちの40リラは今日の利益分ってことだな。」
ルカは思った。
「そういえば、僕が果物屋を始めたときに、自分の貯金40リラを使って、最初の仕入をしたんだっけ・・・。そうすると、今ある500リラから40リラ引いた、460リラが今までの商売で儲けた利益ってことか。今ある現金の残高が全部、利益ってことじゃないんだな。」
※赤文字は損益取引・青文字は資本取引
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ルカのいうとおり、「今ある現金の残高が全部、利益ってことじゃない」んです。
商売を始めようと思ったら、ほとんどの場合、準備のためにお金が必要ですよね。
果物屋を始めようと思ったら、まず果物を仕入れないといけないし、屋台などの用意もしなければいけません。仮にサービス業であっても、電話や事務所の家賃などお金がかかります。
でも、最初ですから、もちろん売上なんかありません。なので、お金もありません。
だから、最初は自分の貯金を取り崩して、商売の準備にあてますよね。このお金が元手(会計用語でいうところの資本金)です。
ルカが自分の貯金を使った元手の40リラは、同じ40リラでも、商売で儲けた40リラとは全く内容が違いますよね。
これを一緒にしてしまうと、「最初の元手はいくらで、いままでいくら儲けたんだろう?」と儲けの額がわからなったり、「今ある現金の残高が全部、利益だ。だから500リラ儲けたんだ!」と誤解してしまう可能性があります。
なので、元手からいくら儲かったかをはっきりさせとくために資本取引・損益取引区分の原則があります。
とはいったものの、
いままでの説明を台無しにしてしまうようですが・・・実は、個人事業主の確定申告の場合は、一般的な会計ソフトでは、一年間ごとに元手のお金と儲けた利益が事業主勘定というのに集約されて、次の年に繰り越されるちゃうことが多いので、複数年単位で見ると資本取引・損益取引が一緒くたにされているというのが、現実です。
まぁ、確定申告期間の一年間は資本取引・損益取引区分の原則が守られているので、税金の額が変わらないため、税金の計算上はこれで問題ないのです。
でも個人的には、自分が最初いくら元手を出したのかが、一目では、わからなくなってしまうので、やはり資本金・繰越利益剰余金という勘定で分けておく方がいいのではないかと思います。
この辺の詳しい話は、確定申告の手続きのところで書きたいと思います。
今回は、とりあえず
①元手のお金の記録=資本取引
②商売で動いたお金の記録=損益取引
③元手からいくら儲かったかをはっきりさせとくために資本取引・損益取引区分の原則がある
ということを覚えておきましょう。